742人が本棚に入れています
本棚に追加
彼の部屋のベッドの端にちょこんと座り、気まずそうに俯く私。
「それで?宴会を監視しに来た上にスタッフの前で派手なパフォーマンス。どう言うつもりだ?」
彼は正面のクローゼットにもたれ掛かり、呆れ果てた様に大きな溜め息をついた。
主治医を変更したと言えど、あの病院の医師と患者と言う立場に何ら変わりはない。
もし、病院関係者に私達の関係を知られたら……
「一回り以上も年下の患者に手を出した」と、蔑んだ目で噂され、医師としての品性を疑われるかも知れない。
酔いが醒めて行くにつれ、自分がしでかした事の重大さを自覚する。
「…ごめんなさい。本当はあんな事するつもりじゃなかったの。でも私、心配で仕方なくて……」
「一体、何が心配なんだよ」
「…友達から聞いたの。医療関係者の忘年会は…その……乱れまくるって…」
「はっ?」
「浮気や不倫なんて当然の事で……だから私、先生もそうなったらどうしようかって、考えてたら居ても立っても居られなくなって…」
ばつが悪そうに語尾をもごつかせ、上目遣いで彼を見る。
「はぁ?何だそれ。くっだらねーなっ」
吐き捨てるように言って、彼は眉間に縦軸を刻んだ。
「くだらないだなんて…ヒドイっ。…本当は、私を彼女にしたこと後悔してるでしょ?嫉妬してあんな馬鹿な事をして。私じゃ先生に不釣り合いだから…」
彼の瞳から逃げ出して、悲観に満ちた声を漏す。
最初のコメントを投稿しよう!