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「不釣り合い?それ、どういう意味だよ」
先生は冷然とした口調で言って、口端を歪めた。
「…本当は佐伯さんみたいな、大人の女性が良かったって思ってるでしょ?」
醒めたはずの酔いが燻るように、再び体がカッと熱くなる。
彼の怒りに触れると分かっているのに…
「…付き合ってても私みたいな子供はつまらないって、そう思ってるんじゃないの?」
無感情とも言える彼の表情を見ていると、悲観的な思いが声となり滑り落ちる。
「……それ、本気で言ってるのか?」
「だって……友達も言ってた。私がこんな…」
「またそれか。友達友達って、人の意見に振り回され過ぎなんだよっ。…勝手に一人で暴走しやがって。おまえの、そう言うところが子供なんだっ!」
私の声を遮り、一喝するような厳しい口調で言って私を見据える。
「だって…だって……ゥッ…」
息が止まり、声を失い、涙で潤んだ視界が霞む。
「先生…だったら、私を早く大人にしてよ」
ベッドから立ち上がり、すがる思いで彼の胸に飛び込んだ。
「琴音?……」
「早く先生のものになりたい。じゃないと私……」
……もう、どうして良いか分からない。
好きだから不安になる。
不安だから、自分でも嫌気がさすほど我儘になる。
……先生と一つになれたら、この気持ちは楽になれるよね?
「お願い……先生」
「本気で言ってるのか?」
彼の低い声が耳元に落ちる。
「……」
私は瞼をきつく閉じ、彼の腕の中で小さく頷いた。
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