恋の病は・・・Second Season~冬~

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「琴音…自分の感情だけじゃなくて、もっと先生に目を向けてごらんよ」 感傷的になる私を真っすぐに見つめる恭子が、落ち着いた声色で言った。 「えっ……」 「先生は、本気で琴音を大切に思ってるんだよ。琴音を私に託した、あの先生の目を見てそう感じた」 「先生の目を?」 「うん。でもきっとその目は、二人が付き合うずっと前から琴音に向けられてたんじゃないかな。 琴音、遠くから見つめるだけの片思いはもう終わったんだよ?だから、もっと隣りに居る先生を見てあげなよ」 彼女はそう言って柔らかな微笑みを浮かべる。 かと思いきや、突然、私のお皿に手を伸ばしフォークでイチゴをブスッと突き刺し、そのまま口にパクッ。 「あっ……私のイチゴ」 「美味しい~!早く食べないとそのパンケーキも貰っちゃうよ」 恭子は甘酸っぱいイチゴを頬張りながら、ふふっと可愛らしく笑った。 ――――午後6時55分。 ここは、港の中央広場に聳え立つ大きなクリスマスツリーの下。 夜空を飾る色とりどりの輝きを見上げ、私は一人寂し気な顔をして溜め息をついた。 今夜の催し物は、毎年恒例のクリスマスイベントの一つである【名古屋港スターライト・HA・NA・BI】。 定番のクリスマスソングと共に、海に浮かぶ台船から花火が打ち上がる。 海の香りが漂うロマンチックな夜空の下には、寒さに身を寄せ、愛を語らう恋人達の姿。 …待ち合わせ場所、公園の入り口にしておけば良かった。 侘しさに拍車をかける周囲から目を逸らして、未だ音沙汰無しのスマホを見つめた。 公園の柱時計が19時を指す10秒前。 「10!…9!…8!……」イベントの司会者である男女が声を合わせ、打ち上げのカウントダウンを始めた。 港の風に乗って流れるBGMは、マライアの「恋人たちのクリスマス」。 …どうして連絡くれないの? まだ仕事が終わらないから? それとも、もう私となんか会いたくないの? 響き渡るカウントダウンと共に私の目に涙が滲む。 「…3!…2!…1!」 満開の花が開くように、冬の空に真っ白な光が放たれた。
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