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「わぁ~ホントだ!可愛いっ。…あっ、今度は百合かな?たくさん重なると綺麗だね~!」
私は声を弾ませ、同じ夜空に視線を飛ばす。
先生は私の手を握り、自分のジャケットのポケットに滑り込ませた。
ポケット中で指を絡ませ、温め合い、互いの温もりを感じ合う。
「…この間はごめんなさい。私、最低な事をいっぱい言っちゃった…」
先生の横顔を見て、しおらしく声を落とした。
「…もういいよ。俺もキツイ言い方したな。悪かった」
先生は夜空に向けていた視線を離し、私を見て目じりを下げる。
「…私、先生の彼女になれた事が未だに夢みたいで…。凄く幸せなのに『先生は本当にこんな私で良いのかな』って、時々不安になるの。だから私……一人で焦ってたのかも知れない」
私は彼の優しい瞳を見つめ、消えそうな笑みを浮かべる。
「自分の患者と付き合うには大きな葛藤を乗り越え、琴音が考えているよりも覚悟のいるものだ。だからこそ、琴音を大切にしたいと思ってる」
「先生……」
「簡単に手が出せないほど、俺は心底おまえに惚れ込んでる。…これじゃ、安心できないか?」
彼は少し照れたように口元を緩め、ポケットの中で私の手をぎゅっと握り直す。
先生の言葉は、私の心に温かな波紋を広げて行く。
嬉しくて、くすぐったくて、
胸がキュンとする。
「不釣り合いだとか勝手に決めるなよ。そんな境界線を張られたら、俺が虚しくなるだろ」
「う…ごめんなさい」
「それに、この間の誘惑は反則だ!こっちは、おまえに無理はさせたくないと我慢してるのに…俺を暴走させたいのか!残酷な女めっ」
「ええっ!?」
我慢してる!?暴走させたいのかって……
ポッと頬が赤らむ。
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