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―――12月上旬。
デパートや雑居ビルには、クリスマスツリーやサンタクロースなどのマスコットが置かれ。青い光が散りばめられた街路樹は、夜の街並みを幻想的に彩る。
車窓から見る街の装いはクリスマス一色となっていて、そのキラキラと光り輝くイルミネーションを見ているだけで自然と心が躍る。
私の隣りに座るのは大好きな篠田先生。
街並みから視線を外し、愛車のハンドルを握る彼の横顔を見る。
目鼻の整った綺麗な横顔。男性を思わせる筋の通った喉もと。
街のネオンに照らされる彼は、いつもに増してかっこ良くて、美しくも思えて……
見つめているとドキドキして、隣りにいるだけで嬉しくて心が蕩けてしまう。
今日は5回目のデート。
映画を見て、ショッピングをしてドライブをして。お洒落なイタリアンレストランで食事をして。
今日は病院からの呼び出しも無く、丸一日先生と一緒にいられた最高に幸せな休日だ。
だけど、一緒にいる時間が長いほど夜が深くなっていくのが淋しくて。
「じゃあな、また連絡する」
「……うん」
帰りたくない。このまま朝まで時間が戻ればいいのに……
「明日は朝から授業だろ?スマホ弄りばかりしてないで早く寝ろよ」
自宅のすぐ側にある公園の前で車を停めた先生が、あからさまに淋しそうな顔をする私を見つめてふっと静かな笑みを浮かべた。
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