悪癖

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これは一種の癖であり、仕方のないことなのだと考えるとすとんと胸に落ち着いた。 しかし、そうとなればもう結婚は諦める他なさそうだ。 見ているだけでいいのだ。 ただ、幼児達を遠くから見ていると何か堪えきれぬ欲がむくむくと大きくなるのを感じていた。 その頃だった、クリスの父親が死んだのは。 母親を早いうちに亡くしていたクリスにとって有一の肉親だった。 そして父親が死んだことにより、その遺品がストンとクリスの元へ落ちてきた。 古い時計、腕輪、本、そして山とそこに建つ一軒の家。 どれも必要のないものだと切り捨てて、大半は売ってしまったが、山と家だけはなかなか買い手がつかず、結局クリスの物になった。
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