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この作業を続けるには刺激があまりに少なすぎて、退屈だ。
クリスは灰を払い、煤の塊を握り潰した。
中まで焦げている。
それを見てから子供を見る。
ピクリとも動かず、声もあげず、紫色の顔はただ宙を見ていた。
「声が、足りないのかも」
なぜそのような発想に至ったかを問われると、答えは明白だ。
静かすぎたのだ。
山の木々は音を吸い、街の喧騒を遠ざける。
ただ、自分のたてる音と血の滴る音しかしないなんて、陳腐なホラー映画のようで嫌だ。
生きたまま連れて来れば少しは違うかもしれない。
クリスがその発想に至ったのは、別に彼の出生や生い立ちのせいではなかった。
彼はただ、何処にでもいる普通の寂しがりやだったのだ。
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