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実の母親にナイフで体を切り付けられた、当時5歳の私はなんとか一命を取り留めていた そしてあの残虐な事件から7年 12歳になった私は父方の祖父母と共に生活をしていた 「苺花ちゃんは本当に辛かっただろうに‥」 「ばあちゃんやじいちゃんが守ってあげるからねぇ」 優しいおじいちゃんとおばあちゃん 蒼「‥うん だいぶ傷は薄くなったね」 最近小皺が目立つ頼もしい父 今の生活に不自由はない 幸せだ だけど‥なにかが違う 足りないんだ 『…パパ、ママは自首、したんだよね』 あの事件のことは詳しくは教えてもらえないけど、自首した事だけはテレビを伝えて理解していた 悲しそうに私を見つめる父は小さく頷く ママ… 幼い頃の記憶はあまりに遠くて、ハッキリとは覚えてはいない だけど、私を見つめるあの辛そうな瞳だけは忘れられなかった パパといると幸せそうに笑うママ 私といると苦しそうにするママ だけど幼いながらに分かっていた ママは必死に私を育ててくれていたこと これは、最近おじいちゃんが話していたのを盗み聞きした話なんだけど ママは家族がいなかったんだって 小さい時に母親に捨てられて、それからは施設にいたみたい だから愛情を知らずに育ってきたんだと、おじいちゃんは言っていた 『…クッキー、出来たよ』 でもママは私を喜ばせようとしてくれていた 鼻の大きなクマのクッキーを作ってくれた 床を汚しても、怒らないで 『一緒に綺麗にしようね』 そう優しく言ってくれた ママは愛情を知らないんじゃない ママは家族を愛してくれていた 私のことも、愛してくれようとしていた 蒼「‥苺花? なに書いてるの?」 『手紙』 蒼「お友だちに?」 『ううん ママに』
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