0人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
「ねぇねぇ。ママ。」
少年が、一緒に手を繋いでる母親に話しかける。
「どうしたの。孝太。」
母親は少年の顔の前にしゃがみこみ、そういって孝太に優しく微笑む。
「どうして僕は日本人なの?」
「それは、孝太がママとパパの子供だからよ。」
「ふーん。」
腕を組みながらそういうと、孝太はすぐに次の質問をする。
「じゃあどうしてママは日本人なの?」
「それはママがおじいちゃんとおばあちゃんの子供だからよ。」
「そうなんだ。」
腕を組みながら頷く孝太を見て、母親はクスクス笑っている。
「じゃあどうして僕達は日本人って分かるの?」
「それは、私達のいる場所が日本だからよ。」
「じゃあ……。」
その言葉に孝太はすぐに質問する。
「日本がなくなったらどうなるの?」
「え?」
母親から笑顔が消える。
孝太はかまわずに、母親に問い詰める。
「なんで日本は兵器をつくらないのに他の国は沢山つくってるの?」
「孝太?」
「日本が無くなったら僕達何人になるの?」
そういうと、孝太の瞳から一粒の涙が落ち頬を伝う。
「孝太……。」
母親は、孝太を優しく抱きしめる。
「大丈夫よ。孝太は何も心配しなくていいわ。日本はずっと平和だし無くならないし、孝太もママもずっと日本人よ。」
「ほんとに?」
「ほんとよ。孝太は悪い夢を見たのよ。孝太は、これからも日本人として育って、立派な大人になるのよ。だから大丈夫よ。」
「うん!」
服の袖で涙を拭き、孝太は力強く頷く。
「家に帰りましょう。パパが待ってるからね。」
「うん!」
母親の優しい言葉に、今度は笑顔でそういい孝太は頷く。
二人は夕陽に向かって歩いていく。
手を繋ぎながら小さくなっていく二人の親子。
なぜかその後ろ姿が寂しく見えたのはきっと……。
最初のコメントを投稿しよう!