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さちえの言葉を引き継ぐ形で、一樹が真顔になって晶子を見つめた。
「ところで、晶子さんには次期生徒会で副会長を務めてもらえないかなあ。うちの学校は生徒会長以外の役員人事は生徒会長の専管事項だからね」
「ええーっつ。わたしが?どうして?さちえはどうするの?」
晶子はてっきり、さちえが副会長になるものと思っていたので、驚いた。
「これはさちえさんとも相談して決めたんだ。晶子さんは剣道部にいたときもそうだったけど、みんなの先頭に立って闘う勇気とリーダーシップを持ってると思うんだ。ただ、部活義務化の規程では、生徒会役員は部活と見做されて、しかもほかの部活と兼務はできないので、チアガール部を辞めなければいけなくなるけど」
晶子は、一樹とさちえが自分のことを色々考えてくれていたことを知って、うれしかった。
「わかった。さちえが良いって言うのならわたし、副会長をやってみる」
その言葉を聞いて、一樹とさちえが手を叩いて喜んだ。
「それで、さちえさんには書記をやってもらうことにしてるんだけど、会計はまだ決まっていないんだ。それで、朋美さんに頼みたいんだけど、どうだろうか?」
「えっつ。わたしはもう生徒会の仕事はコリゴリだわ」
朋美は蜷川庄司の一件で辛い思いをしていた。
「そう言わずに、引き受けて欲しいんだ。朋美さんがこれまで生徒会の事務局として、会計担当役員をサポートしていたことを知っているから、余計に朋美さんしかいないと思ってるんだ」
一樹はいつになく朋美に対して、粘り腰だった。見かねた晶子が一樹に助け舟を出した。
「朋美、わたしと一緒にやろう。一樹さんの任期は十月から三月までの半年間だから、高校生活の最後を、わたしたちも生徒会の仕事で飾ろう」
朋美は晶子の真剣な眼を見て、頷いた。
「晶子がそう言うなら、分かったわ。一緒に頑張りましょう」
それからしばらくして一樹やさちえと別れたあとショッピングをして、晶子と朋美は難波にある宿泊ホテルに到着した。もう、夕刻近くだった。自分たちのツインの部屋に戻ろうとしてロビーで鍵を受け取ったとき、後ろから声を掛けられた。良平だった。
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