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「やあ、晶子さんに朋美さん。買い物をしてきたの?」
朋美が下げているショッピングバッグを見ながら、エレベーターホールの方から良平が歩いてきた。
「ああ、良平さん。今日の試合は劇的な逆転勝ちだったわね。おめでとう」
「うん、ありがとう。晶子さんたちの応援のおかげだよ。本当に勝てて良かったよ。今、親父が来てるんだ」
そう言って、良平はロビーの喫茶コーナーの方に手を振った。晶子と朋美が振り返ると、窓側の席に座っているがっしりした体格で黒い背広姿の男性が満面の笑みでこちらに向かって手を振っていた。
「良かったら親父を紹介するよ」
「そう。じゃあ、ご挨拶だけするわ」
晶子と朋美は良平の後について行った。良平の父親が席を立って良平たちを迎えた。
「やあ、良平。久しぶりだな」
「親父、紹介するよ。俺のクラスメートでチアリーダーの朝倉晶子さんと川木田朋美さんだ」
晶子と朋美がぺこりと頭を下げた。
「ああ、良平がお世話になってます。わたしは良平の父親で、伊藤春雄と言います」
春雄に促されて、晶子たちはテーブルについた。良平が春雄の左隣に座り、春雄の向かいに晶子、その右隣に朋美が座った。早速、ウエートレスがやって来て注文を取った。良平たち三人はアイスコーヒーを頼んだ。
「良平さんに伺ったんですが、単身赴任されてるそうですね」
晶子が春雄に話し掛けた。春雄は人懐っこく微笑んだ。
「昨年の暮れからこっちに来ています。警備保障の会社勤めで、十三(じゅうそう)に支社があるんですよ。そこで、現金輸送などの業務を任されているんです」
「それって、危ないこともあるんでしょう?」
朋美が訊いた。
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