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翌日、嘘のように晴れやかな顔をした日和の姿にスタッフ一同はなぜかあきれ顔だ。
「なんだよ。恋人とよろしくやってたのかよ。あほくせー!」
「え? なんでそんなの知って……」
「顔に書いてるぜ。幸せでしたってな」
「え、ええ?!」
「昨日の分も働けよー」
交代のスタッフ達に、次から次へと頭を小突かれて、日和は首をかしげて何度も自分の顔を撫でてみる。
「何も書いてないよねぇ? 巴ちゃん」
「書いてるわよ。肌艶々じゃん。目の毒だから襲われないように気をつけなさいよ!」
「何それ?」
「知らない! もう鳴沢さんに言っておかなきゃ。あんまり日和を可愛がると他の男に目をつけられるわよ!って」
「どうして一也さん帰ってたって知ってるの? 二時間しかいなかったのに」
「日和がしょげたり元気なったりするのはあの男の所為に決まってるじゃない。ばかね。もう皆知ってるんだからいい加減ぶりっこは止めてよね」
「ええええーーー!?」
二時間の魔法をかけた北村は、今日もニコニコと微笑んでフロントにいた。
その姿は、恋人達の守護聖人と言われる、セント・ウァレンティヌスに似ていると、噂されたとか。
「バレンタインの魔法使い」
~END~
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