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「うわー、これじゃあこの前コンパで知り合った子に連絡取れないじゃん!」
頭を抱える光本に背を向け、コンパスに意識を集中する。
「北はあっちだな」
私は茂みを指差して歩きだした。
「おいおい、本当にこの先に村なんかあるのかよ……。道なんて無いのにさ……。なんか印とか付けながら行かなくていいのか?」
私の後ろで喋り続ける光本。
小田は黙々と垂れ下がる枝を掻き分けてついてくる。
ーーーーそれから1時間も経つと、流石の光本も全く喋らなくなった。
「おい、5キロならそろそろ着いていい頃じゃないか?」
水を飲みながら久々に口を開く光本。
「まだ3キロくらいの地点だ……。このペースで行っても、あと30分は掛かる。少し、休憩するか?」
「いや、こんな中途半端な所で休憩して夜になるのは嫌だ……。小田、お前は大丈夫か?」
最後尾で黙々とついてきている小田に問い掛ける光本。
木を背もたれにして私も小田に視線を送ると、小刻みに肩が震えている事に気づく。
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