第三夜:歩美

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「ん?おい小田……お前大丈夫か?」 私が駆け寄って顔を覗き込んでそう尋ねると、小田は真っ青な顔でブツブツ呟いている。 「嫌な予感がする……。嫌な予感がする……。嫌な予感が……」 「それは、車の中で言ってた迷うかもしれないって予感か?大丈夫、あと少しでちゃんと……」 「違う!もっと恐ろしい……嫌な予感。こんなこと、初めてだ……」 唇をブルブル震わせて小田は言葉を続ける。 「部長、副部長、非常に言いにくいんですけど、今から引き返しませんか?」 その言葉に、呆れた顔で光本は反応する。 「今更何を言ってんだよ……小田。また同じ道を戻る方がしんどいって。ここまで来たら落崖村に宿泊してだな……明日の朝に」 「ヤバイんです!!絶対これ以上進むと……ヤバイんです。僕、そういうの解るんです」 普段声を張り上げる事の無い小田が光本の言葉を制止し、狂ったように叫んだ。 私と光本は驚いた顔で固まる。
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