1039人が本棚に入れています
本棚に追加
「小田、気持ちは解るけど、光本が言うように一旦村まで行って、明日の朝引き返した方がいい……。今から戻る方が危険だ……」
私は小田の肩に手を置いて優しく話しかけた。
小田は震える下唇を噛みしめ、私に視線を合わせる。
「もし……もし村に行ってから危険だと判断したら、すぐに引き返すって約束してくれますか?」
小田の真剣な表情に、私は「わかった」と言って大きく頷いた。
ーーーーそれから1時間ほど歩き、木々の隙間から夕日が差し込み始めた時、崩れかかった木造の家が私達の目に映った。
家と呼べるような状態ではない家が、適当な間隔を空けて並んでいる。
「ほ、本当にあった……」
肩に掛けていたカバンを足下に下ろし、目を丸くして呟く光本。
「夜になる前に辿り着けて良かった……。この明るさならテント張れそうだな」
私がそう言って光本に視線を送ると、光本はハッとした顔で私に笑顔を向ける。
「その顔……もしかしてテント忘れたのか?」
私が目を細めてそう尋ねると、光本は申し訳なさそうな顔で舌を出した。
最初のコメントを投稿しよう!