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「だとしても、あそこまで人形を痛めつけるなんて正気の沙汰じゃないわ」
私はそう言いながら顔を上げると、夕日で赤かった空は既に闇に飲み込まれようとしていた。
「もうこんな時間か……」
光本がスマホを見ながら呟く。
「とりあえずまだ明るいうちに崖の写真を撮りに行くわよ!」
そう言って私は先頭を走り、廃屋の前にある傾斜の低い坂を駆け上がっていく。
「歩美っち早すぎ!」
笑いながら追いかけてくる光本と、周囲を警戒しながらついてくる小田。
30軒近くある廃屋を抜けると、スレッドに書かれていた通りに崖が現れた。
自然が作り出したにしては余りにも不可解な切り取られ方をしている。
真下には川が流れ、ゴツゴツとした岩が無数に広がっている。
命を絶とうとしている人間には、もってこいの場所だろう。
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