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少しでも気持ちを明るくしようと思って再生した写真は、夕方に見たモノとは明らかに変わっていた。
廃屋の写真すべてに、髪の白い少女が写りこんで居るのだ。
廃屋の奥で膝を抱えている写真や光本の背中に触れて奇妙な笑みを浮かべている写真まである。
『夕方見た時は……写ってなかったのに……』
目を擦りながら、写真をタップして拡大するが、半透明の少女は消えることは無い。
写真を次々指でスライドさせ、崖の底を撮った写真を見て私は愕然とする。
崖に手を掛けてよじ登ってくる半透明の人間が無数に写って居たのだ。
「うっ……」
思わず目を逸らしてデジカメをカバンに戻す。
その時、膝のあたりに何かが当たっている感触を感じる。
私がゆっくり視線を落とすと、先ほど写真の中に写りこんでいた少女が無表情で見つめていた。
白目の部分が真紅に染まった目で瞬きもせずに見つめている。
「いやぁああああああああああああああ」
甲高い叫び声を出した私は、四つん這いになって一番端の廃屋に向かって逃げていく。
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