第三夜:歩美

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大きな黒い影が小田の背後から近づいてくる。 私は再び尻餅を着き、得体の知れない恐怖から逃げていく。 流石にデジカメの光を当てる勇気は無い。 「光本……光本…………」 光本の笑顔が頭に浮かんだ私は、光本の名前を何度も繰り返す。 その時、小田が呆れたような声で語りかける。 「部長……光本副部長なら、すぐ隣に居るじゃないですか」 その言葉を聞いた私が右下へ視線を落とすと、首を失った光本の肉塊が横たわっていた。 胸から腹にかけて大きな十文字の傷が入っており、内臓が少し顔を出している。 「ぁ…………あぁ…………」 これが夢ならば、早く覚めてほしい。 これが夢ならば。 そんな事を考えて固まっている間に、目の前で立っていた小田の首は何者かによって跳ね飛ばされる。 ザンッと言う音と同時に、ゴロゴロと遠くへ転がっていく小田の首。 叫び声を上げる暇も無いまま、大きな黒い影によって小田は殺された。
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