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「嫌だ……助けて……お願い…………。まだ……死にたくない……。私はただこの村がどんな場所なのか……知りたかっただけなの……」
念仏のようにそう呟きながら後ずさりする私の背中は、いつの間にか壁にピタッとついていた。
ギシィ……ギシィ……
目の前に近づいてくる巨大な黒い影から、大型犬のような唸り声のようなものが聞こえる。
「うぅ……うぅぅぅぅぅ…………」
手には私の腕よりも長いノコギリを持っている。
「うぅぅぅぅ……あぁぁあああああああ」
黒い影は大声で叫びながら、ノコギリを持つ右腕を高く振り上げた。
その瞬間、走馬灯のように頭の中にスレッドが流れる。
『この村の終わりには崖がある。
この村には誰も住んでいない。
この村には決して足を踏み入れてはいけない』
この村の終わりには確かに崖はあった。
足を踏み入れちゃいけない場所だと言うことも解る。
ただ、誰も住んでいないというあの言葉は、嘘だ。
そう考えた時、既に私の首は胴体から離れ落ち、膝を抱えて座る自分の肉体を見つめていたーーーー
完
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