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「やったな、タツオ」  クニが小躍(こおど)りしながら手を打っている。タツオは荒い息を返すのが精いっぱいだった。 「…………」  テルがあごをしゃくっていう。 「あれ、見てみろ」  タツオは上半身をなんとか起こした。柔術場の反対側では、東園寺(とうえんじ)崋山(かざん)がとり巻きに囲まれ、腕を組んでいた。そこに制服姿の五王(ごおう)龍起(たつおき)が近づいていく。カザンはタツオのほうを見つめながら、わざとらしくタツオキと握手を交(か)わした。クニがつぶやいた。 「あーあ、日乃元(ひのもと)一の金もちと近衛(このえ)四家の筆頭格が手を組んでるよ。おれたちに明日はないかもな」
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