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「やってられませんよ。取っても取っても次から次へと生えて来るんですから……」
まぁ、無限ループしているのは俺の草取りも一緒だけど。絹子婆さんを笑えた口じゃないなぁと思ったら哀しみのあまり頬が歪んだ。
「雑草がよく伸びるなぁ、土が良い証拠だんべぇ。ここん畑で採れた野菜は旨ぇって村じゅうで評判だがな」
「……まぁ、そう言ってもらえると、……嬉しくなくもないというか」
「何をしょぼくれた面してんだぇ。だいたいよぅ、こんないい土地とこんな働きモンの若ぇ男っ子が揃ってんだから、学校の女っ子だって放っておかねぇんべよ? モッテモテだんべがな」
そんなわけがあるか。いつの時代の話だ。むしろこの畑のおかげで、俺は高校生になってこの方、話した女の子といったら絹子婆さんくらいなのだ。
「……」
あれ、女の子って何だっけ。もうダメだ、男子高校生としてありえない部分がゲシュタルト崩壊を起こしている。俺の青春が土気色のまま息絶える未来が現実味を帯びてきた。
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