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お願いします。後生だから。
「そいやぁっ!!」
願いと共にひときわ気合を入れて、引っこ抜いた雑草は思ったよりも根が深かった。ごっそりついてきた焦げ茶色の腐葉土を目の当たりにして、すぅっと、加熱した意識が土気色の現実に引き戻されてしまう。
「はぁ……」
何が畑の神様だ、ばかばかしい。唐突にやる気が削がれてしまって、ため息と共に膝頭へ力を込めた。仕事の切りとしては中途半端だけど、どうせどこまでやろうが明日の仕事量に大差は無いのだ。
また釘が刺さったみたいに痛み出した腰の筋肉をトントンとほぐしながら、「痛つつ……」と顔を上げたその先に。
「あの!」
うちの制服を着た女の子が、真剣な眼差しで俺の方を凝視していた。
「……!?」
まず二秒くらい幻覚を疑った。その後、俺を見ているのが勘違いじゃない事を確信するまでに五秒くらいを要した。
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