1.人と人が出会うのは、春だけとは限らないのです

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跨っていた自転車から降りて、カシャンとスタンドを下ろす動作も何だかカクカクとぎこちなかった。こうして見るとけっこう小柄で、身長は百五十をちょっと越えたくらいだろうか。背中まで伸びた栗色の長い髪と、くりくりと大きな垂れ気味の目が、何だか小動物みたいで可愛らしい。でも、あれ、どこかで見た顔だなぁなんて記憶を辿ろうとした矢先、 「お願いします! あたしにここの畑を手伝わせて下さい!」 ガバッと絹子婆さん張りに腰を折って頭を下げた、彼女の言葉の意味を理解した俺は「はぇっ!?」とかまた間抜けな声をあげてしまった。 だって、おい、嘘だろ……。俺は思わず、畑の隅に佇む『はたけのかみ』様を見遣ってしまった。 同年代の高校生、同じ高校、女子生徒、うちの畑を手伝ってくれる。彼女は俺の非現実的と思われた願望を余すことなく満たしていた。もしかして畑の神さんて、かぐや姫の旦那さんか何か? 心の中で呟いてみるも答えが返って来るはずもなく。
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