第一章

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「我ら大国が、力の放棄を率先せねば、小国への示しにならん。リュースケの言う通り、イージスがあれば、レイを恐れる事もあるまい。イージスを兵の基本装備とすれば、皆の不安も軽く出来よう」 王に決断されては何も言えないと、研究者達は黙り込んだが、王の言葉は続いた。 「それに、不安を抱くお主達なら、王都を守る結界を、更に強力にしてくれると信じておる」 国王の笑顔は、三十歳を越えた今も爽やかである。 変わらず人に安心を与え、求心に役立っている。 国王に誠実な対応をされているのだ。如何に、頑固頭の研究者でも、素直になる他無い。 「「はい。お任せを…」」 よく、声が揃うなと感心するが、これも一つの嗜みらしい。 一丸となって…。という意思表示である。 「うむ。一応、釘は刺しておいたが、小国が素直に武力を放棄するとは思えん」 「モールでございますな…」 白髪混じりの銀髪に無精髭。目の下のクマが20年間消えた事は無い王宮研究室の室長イアン・ドルフが畏まって答える。 オーディ王国の南東に、モール小国という国がある。大陸を横断する山脈に隣接している国で、最も魔力含有鉱石が眠っているとされる鉱山を保有している。
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