たった一歩、されど一歩

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絶対断られるって覚悟してたのに。 「いいの?」 「もちろん!」 手嶋君は明るい笑顔で頷く。誰にでも親切で楽しくて、見ているだけで幸せなのに、仕事まで手伝ってもらえるなんて。 「あー、浮かれてるとこ悪いんだけどさ、まさかあんたこの程度で満足してるわけ?」 気がついたらなぜか横にカイ君がいる。 彼の姿は私にしか見えないようで、手嶋君も友達も何も気付いていない。 カイ君の発言に、顔に熱が集まるのを感じる。 「浮かれてなんかっ…」 「天原?」 手嶋君が不思議そうにこっちを見る。 カイ君が見えてないって事は私が独り言を言っているように見られるってことなんだと気付く。 「なんでもないっ」 焦りからか声が少し裏返ってしまったけれど、手嶋君は気を遣ってくれたのか、それ以上追及してこなかった。 「ごめん、後にしとけばよかったな」 頬を掻いて俯くカイ君に、私は黙って首を横に振る。
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