たった一歩、されど一歩

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カイ君は一瞬何かを考えるように視線を外してから、私から一歩離れる。 「…なんか言いたいことあったら、紙かなんかに書いて。そういう手段がない時は、僕はなるべく颯姫に話しかけないようにする」 少しだけ寂しそうに口を固く結んで、また一歩離れていく。 私のことを思ってやってくれている行為であるはずなのに、喪失感に似た何かが私の中で揺らぐ。 行かないでほしい。なぜだかカイ君が離れていくのが寂しい。 心で思っていてもカイ君は超能力者なんかじゃないから、伝わることはない。 「おっす。何だよ健太郎、ハーレムじゃん!」 「やっと俺の魅力が皆に伝わってきたな!」 「どこに魅力があるんだよ。同情なんじゃねぇの?」 クラスメートと手嶋君の笑い声で、もう学校に着いてしまったことに気づく。 しまった、思考に耽りすぎてあんまり話出来なかった。
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