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「起きろ小僧、狩りに行くぞ」
身の丈程の斧を担ぎ、少年を文字通りたたき起こす。
「…っ!?」
その容姿は寝起きの少年に危機感を芽生えさせるには充分な威力を発揮したのか、慌てて飛び起きる物の、簡易的に作った寝袋によって蹴躓いた少年を片手で支え次郎は笑う。
「ガハッ!慌てんなってーの、何度も言ってるじゃねぇか!別に取って喰いやしねぇってよ…まぁ、付いてこい、お前にも仕事してもらうからよ」
「……」
静かに頷く少年を片手に抱えつつ、何度目になるかの森へ歩を進める。
しばらく歩くと森が軽く開けた場所に大きな切り株が見えてくる。
傍には小さな泉と小川が有り、周りの木々にはいくつか赤い印が見える。
そして小川をまたぐようにして木で組まれた物干し台の様な物とロープがある。
木に残る血痕から放血に使ったと想像出来る物だ。
「あの赤い印の傍に罠が仕掛けてある、そこに動物が掛かってたら俺の所に持ってこい…解ったな?」
「うぁ…っ!」
おかしな返事と共に頷いた少年を横目に次郎は手近の木へと向かっていく。
「俺はここら辺軽く広げて小屋立ててるから斧振ってる時は近づくなよ?」
少年が頷いたのを確認し、木に向かって斧を振り上げる。
スパンッ!という乾いた音を鳴らし斧が木へと近づく。
角度を見極め、鋭角に振り下ろした斧は木を真横に切り倒して居た。
「…おう…こうなるとは予想外だったぜ…」
こうして次郎は身体能力も底上げされている事に気づいた。
それを見る少年の目はキラキラと輝いていた。
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