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「小僧、見てねぇで、体動かせ体」
内心焦りつつも少年を叱りつけ、自分自身も確認の為体を動かす。
今なら長年の夢でもあった丸太を振り回すなんて芸当も出来るのでは?と考え木に手を掛ける。
本気で握った丸太はまるで化け物にかじられたかのようにバキィッという音をたて抉り折れてしまった。
(…小僧の頭本気で殴らなくてよかったぜ…鉛玉食らったみてぇにはじけ飛ぶ所だった…)
思えば本能的に力をセーブしていたのかも知れない。
そうでなければ今頃、近距離からアサルトライフルによって撃ち抜かれたかのように脳漿をまき散らした子供の死体が出来上がりかねない程、身体能力が上がっている事実に若干の畏怖を感じる。
それと同時にこの体を持っていようと使う相手が居ない事実に落胆してしまう。
別に殺戮を行いたい訳ではない。
争いの虚しさは嫌と言うほど知っている。
「…この体が有ればどれだけ無駄に殺さずにすんだかねぇ…」
背後から聞こえたガサガサという音に気づき、振り向く。
「よう、最初の化け物はゴブリンかい?まぁ、俺の言葉を理解できるほど賢くもねえか」
神から与えられた魔眼により、有る程度ここいらに住むモンスターの生態は把握している。
そして、この種が異常繁殖している事も…
無論知っていた。
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