爺の教育方針

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次郎が少年の元に着いた頃には既に五体のゴブリンが地に伏せ、一際大きなゴブリンを残すだけと成っていた。 少年は赤い靄のように見える魔力を身に纏い、出会った時に持っていたナイフでゴブリンの猛攻を右へ左へといなしていく。 その歳にしては異常とも取れる程に慣れた動きを見せる少年を見て笑みを深くする。 体格差や未発達の体から、まともに受けてしまえば怪我は免れない。 この森で数年暮らし、身に染みているのだろう。 最悪朝には骨すら残らずこの世界から消えることに成る。 疲れが溜まって来たのか、ゴブリンの動きが鈍くなる。 それを見た少年は防御から一転攻めへと動きを切り替える。 動きを見切り、棍棒を持つ手に刃を当て、がら空きとなった胴にナイフを突き刺し、引き際につま先で土を掬い、目を潰す。 でたらめに振り回す棍棒の間隙に合わせその手を斬り飛ばす。 そのまま急接近し、喉に刃を突き立て、長く続いた戦闘は終わりを告げた。 ピクピクと動いていたゴブリンはその動きを止め、吹き出していた血はその勢いを止める。 「まだ終わってねぇぞ小僧」 そういって次郎は、傍に落ちていた小石を拾い、奥の方で倒れていたゴブリンの内一体に投げつける。 その小石は胴体に当たり、甲高い断末魔と共にゴブリンは息絶える。 少年の方に向き直れば、少し前に見たキラキラとした瞳の少年が、汗に額を濡らしつつ立っていた。
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