爺の教育方針

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「いいか、小僧?今回取ってきた山菜の中で毒があるもんを教えてやる…ちなみにお前が取ったのは半分が毒性のあるもんだ」 たき火を前に講義を始める。 最後の言葉に悲しそうな表情をする少年を無視し、話を続ける。 「おめぇの体にはほとんど影響が無いがな、一般人に取っては下手すりゃ死にすらする毒だ…もし親しい相手が出来たときに、同じ物喰わさねぇよう気を付けろよ?んじゃ続けるぞ…毒の有るものでも時には薬に成る物もある、この見るからに毒々しいキノコなんかが良い例だな…これは特定の水と合わせると万病を治す薬の素になるもんだ…向こうにある泉の水なんかがそうだな」 万病治療薬、死体すら復活させる霊薬、永遠の命を作る妙薬等、いくつもの名で呼ばれる霊薬エリクサー、それを作るための素となるのがこのキノコと霊泉を合わせたもの。 これ自体には対した効能は無いもののほんの少しの体調不良程度ならすぐに治せる物ができあがる。 これがあったからこそ、この少年はこの森で生き長らえる事が出来たと言える物だった。 「ただ、このキノコは自生数が少ないからなあまり採りすぎるなよ、無くなっちまうから」 先程とった動物の肉を香草に巻いて蒸したものをかじりながら説明する。 予想通り血の臭みも無く普通に食べられた。 ついでに先程失敗していた木材をチップとして使い薫製肉を作っておく。 こうしておけばしばらくは日持ちする。 塩分を持つ木の実、糖分を多く含む果実、海が無くとも塩が取れ、さらに生で食べられる植物が多く自生するこの森は、向こうの世界との違いをさらに強く感じさせるに充分な物だった。
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