差別と異端

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つむじ風が巻き起こり、草陰に隠れた女の衣服をはためかす。 「なによこの風…!」 そこまで来てやっとの事でワイバーンが背後まで迫ってる事に気づく。 青ざめた顔でワイバーンを見つめる女、口内に何かをため込み、今にもそれを前方に吐き出そうとしているようなワイバーン。 その時間はわずか数秒、もしかしたらコンマにも満たないかも知れない。 そんな刹那の時の中振り返った女の背後から風船を破裂させたような音が鳴り、一瞬撒き上げる様な風が止んだような気がした。 「それを吐かれちゃ困るからよ、どうせ吐くなら上にしてくれや」 いつの間にかワイバーンの目の前まで移動していた次郎は、右足を天高く突き上げるような格好で佇んでいた。 【ギガァァァァァァァァ!】 蹴られたワイバーン自身も気づかぬ内に繰り出された右前蹴りにより、火球が空へと吐き出される。 一部の木が燃えた事も気にせず、全力を持って連続した蹴りを打ち込む。 本当なら今頃、ワイバーンの頭部は先程のゴブリン同様破裂していただろう。 だがそれは叶わなかった。 次郎自身も一瞬忘れていた不殺生の掟… そこに含まれるのは人間、そして異常発生していないモンスターも含むと言うことを。 これで撃退、もしくは逃亡の二択になってしまった訳だが、家を造り始めたにも関わらず逃亡は勘弁願いたい。 最悪遠くまで逃げる事も視野に入れ、攻撃を再開する。 食べることの出来ない生物だと解ればいつかは移動してくれるかも知れないと若干の祈りを込めて…
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