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「なぁ、なんで俺たちはこんな地味なことしてるんだ………?」
「そう言うな、これも立派な任務だよ」
双眼鏡を持ってそう答えた明にも、若干うんざりした空気が感じ取れた。
あれから一ヶ月が経った。本来であれば妖魔を相手にし少しでも協会の信頼を得たい勇介であったが、ここ最近は密入国してきたらしい中国人の追跡ばかりをやっている。
正直に言えば、俺もうんざりしてきている。なぜ名前も知らないようなオッサンの尻を追うような真似を一ヶ月もしなければならないのか……。
「バカみたいに数が多いからな……。とにかく手が足りてないんだよ。それにあいつが魔術師かどうかもわかりゃしねぇ。
とりあえず、あと数日は我慢しろ。そうすりゃまた別の中国人の尻追っかけることになるけどな」
つらっ。
心の中で嘆くも意味はなく、また勇介たちはダラダラと男の監視を続けることになった。
それから数日後、漸く男にある動きを見せた。
「勇介、勇介。こりゃビンゴかもしんねぇぞ」
「んぁ?」
明に声を掛けられ、天力による視覚強化を施し男を見ると何やら人気のない路地裏でモゾモゾと不穏な動きをしていた。
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