お金

1/1
34人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ

お金

むかーし昔、 ある所に貧乏な正直じいさんと意地悪じいさんが住んでいました。 ある冬の日、 二人が住む村にお金神がやって来ました。 お金神は正直じいさんの方が良いと、 一晩宿を頼む事にしました。 「すいません私を泊めて下さい」 「おぉ旅の方か、寒かろう。 ささ入って入って」 正直じいさんは本当に貧乏で、 お粥しか出せませんでしたが、 お金神は大層喜び、 穴だらけの家でボロボロ布団でもぐっすり寝ました。 翌日お金神は家を出る前に、 自分は実はお金神だと言いました。 「今宵は泊めて頂きありがとうございました。 私はお金神なのでこれをどうぞ」 お金神はその名の通り大判小判をザックザクと出して渡しましたが、 なんと正直じいさんは受け取りません。 「いやわしは貴方が困っていたから泊めただけ、 ここは宿ではないから金は頂けません」 お金神が今まで泊まった家の者は、 全員喜んで大判小判を受けとったので、 突き返された挙げ句、 逆におにぎりまで持たされた事には驚きました。 「なんとも変わったじいさんだ。 貧乏なのに心は貴族だな」 おにぎりを一柱で食うお金神を見た意地悪じいさんは、 早速次は自分の家に泊まれと言い出しました。 「ささお金神様!ずっと泊まって結構ですから、 沢山大判小判を出して下され」 「なんだか名前に反してお前の方が正直な気がするなあ。 ほれほれ沢山やるから私を崇めろ」 「よっしゃ!最早わしは長者様じゃ!」 意地悪じいさんはお金神が出した大判小判を使い、 家も豪邸にして豪遊しまくりました。 しかしあまりに派手にお金を使い過ぎたせいで、 奉行所に目をつけられてしまいました。 「おい貴様!貨幣偽造容疑で引っ捕らえるぞ」 「ひぃお役人様!わしはお金神様からお金を頂いているだけです」 「神だろうが化け物だろうが偽造に変わり無い! 者ども意地悪じいさんを引っ捕らえろ」 これを見てお金神は役人の袖の下に、 大判小判をギチギチに詰め込みました。 「まあまあお役人様。 此処は一先ずこれで許してやって下さい」 「貴様!今わしを買収しようとしたな! 者ども!お金神を収賄の現行犯で引っ捕らえろ」 「えぇーっ!?」 なんと意地悪じいさんどころか、 お金神さえ捕まりました。 これを見た正直じいさんは思いました。 「やっぱりお金は真面目に働いて稼ぐのが一番じゃ~!」
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!