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「なあ私が大将やるから、お前は中将な」
昨日のテレビでやっていた映画に影響されて、美夏姉はそう言った。昨日の映画は、宇宙での戦争を描いたSF物だった。その主人公の階級が大将でその親友で右腕となる副官の階級が中将だった。
「うん。美夏姉は強いし頼れるから、大将にぴったたりだね。
山下さん家の犬にも負けないし」
山下さん家にはよく吠える大型犬が居るのだ。そこの前の道を堂々と歩く、それが近所の子供達の度胸試しになっているのだ。
「道幸は私が居ないとあそこ通れないもんな。
でも、道幸は回りが良く見えるし気が効くからな、中将としての資質は申し分無いだろう?」
「もうしぶんない?」
聞いたことの無い言葉だった。美夏姉はお父さんが小説家のせいかは分からないけれど、知らない言葉を時々使う。
「ああ、出来るとか問題無いとかそう言う意味だよ。中将」
「では、大将今日は何処に何しに行くの?」
今日は公園か、その前に駄菓子屋。いや商店街で何かするのも楽しそうだな。
「おう、中将。今日は商店街で何かやるって、かいちょうが言ってたな。
もうすぐお祭りだからそれの準備とこどもには何かくれるって」
かいちょうと言うのはかいちょうと呼ばれるおじさんの事だ何のかいちょうかは、よく知らない。が会う人みんながかいちょうと呼ぶからそう呼んでいる。
「じゃあ商店街に?」
「ああ、本屋のおやじが絵本をくれるかもしれないからな」
美夏姉は絵本が大好きだな、ぼくも好きだけど。
「じゃあ貰える様にちゃんと手伝わないとね」
「わたしとお前いや中将がいっしょならきっと大丈夫だ」
そうときまればすぐに行こう、美夏姉を追いかける様にぼくも走り出す。
「いいぞ、中将。
さあ全速前進だ」
これが、俺が中将と呼ばれた日の記憶。最初は二人だった。今となってはどうしようも無いことだけれど、飽きっぽい美夏姉が俺を中将と呼ぶのを中々止めず、特に仲の良い友達には定着してしまったのだ。
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