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光の源を探るように目を向けると、それはかつて新選組が屯所として間借りしていた北集会所の一室から漏れ出ている。
――おかしい――
島田は首を傾げた。
その建物を夜に訪れる者はいない。
そもそもこんな夜更けだ。朝が早い寺の者は疾うの昔に皆寝静まっている。
――もしや――
島田の頭を一つの懸念が過った。
誰かが勝手に忍び込んでいるのかも知れない。
宿の代わりにしているのかもしれないし、悪さをしているのかもしれない。
何にせよ、ここの者でなければ捕えなければならない。
それが今任されている仕事なのだから。
――まずは確かめなければ――
重たい身体に鞭打って立ち上がると、そっと光の灯る部屋へと忍び寄る。
島田は根っからの真面目な人間だった。
だから、自分がどんな状態であっても来たからには仕事は全うする。
賊が入っているかも知れないと分かっていて見逃すなど有り得ないのだ。
――何故こんな時に――
島田は思った。
しかし、それは誰かが忍び込んでいるという事にではない。
自分の身体が思うように動かない事へのもどかしさからだった。
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