第1章

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第1章

ACT-998 【Game Over】 ◇◇◇ 《スタートボタンを押してください》 【スタート 】 目の前に髭面の男が現れた。髪を無造作に後ろに束ね、威圧するような双眸が炯々と輝いている。忍者? いや違う。剣術者のようだ。両手を袖に通さず懐に入れている。腕のない袖口が風にあおられてパタパタと激しくはためいていた。肩越しに二本の打太刀を差している。腰には左右に二本の脇差。合計四本。念のいったことだ。4本の太刀を扱えるのか? 当然こいつとやり合うんだよな?僕は打太刀を抜いて中段に構えた。長さ4尺の長剣だ。長い!うまく操れるのだろうか? 刀の束を握り締めた。ギリギリと凄い音がする。ものすごい握力だ。僕のアバターはどうやら怪力のようだ。足を小刻みに前後に動かし、間合いを測られないよう十分に注意する。 ところが、僕が切り込む体勢を整えても、奴は微動だにしない。いまだ、腕を懐に入れたままだ。ナメてる?キレるところをどうにか抑える。しかし、いくらなんでもおかしい。 両手を懐に入れていたのでは、そこから太刀を抜いて構えるまで一呼吸、間がある。どういうことだろう?
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