6人が本棚に入れています
本棚に追加
迂闊に飛び込んだら危険だ……頭のどこかで囁く声が聞こえる。
「お主、名前は?」
僕は隙を作らないよう注意しながら、慎重に声をかける。しゃがれた自分の声にびっくりする。
「ムサシだ。……お主は?」
相手も僕を見据えたままつぶやくように尋ねてくる。
「小次郎だ」
僕は答えながら忙しく検索を開始した。ムサシムサシ、コジロウコジロウ……
出た!
《ムサシ・身長182センチ。体重75キロ。技巧派。剣を巧みに操る。二刀流。秘剣十文字斬り》
二刀流か。厄介だぞ。
十文字斬り?それはどういうものだ?
《SSコイン50枚必要です。SSコインを使いますか?》
【SSコインを使う 】
ちぇ……金とるのかよ。僕は含み足でにじり寄った。コジロウの得意技も検索する。
《小次郎・燕返し。斬り上げから斬り下げ、目にも止まら速さで刀の鋒を旋回させる。》
うん。なるほど。剣先を高速で方向転換出来るわけだな。それで、あの凄い握力なわけだ。僕は検索結果に満足し、自信を持った。
ムサシは、剣を構えてもいない。十文字斬りがどういうものか知らないがその技を出す前にやる。
仮に小次郎の1の太刀をいなしても急旋回させた2の太刀が待ち構えている。そもそも、ムサシが1の太刀をかわせるのかも怪しい。小次郎のスピード0・014sec/m。対するムサシのスピード0・019sec/mとある。イケル!これなら勝てるぞ。
含み足でさらに歩を進めながら、それに反比例するように打太刀を手前に引き寄せる。間合いを詰めたことを悟られないためのトリックだ。僕は長い時間をかけ、芋虫のように足指先を伸ばしジリジリと踵を引っ張り、慎重に体重移動する。ムサシは間合いを詰められたことに気がついていないようだ。
最初のコメントを投稿しよう!