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私は、“伝説” を追っている。
あれは、私がまだ幼かった頃。
時期が時期なために、はっきりとした記憶など残ってはいないが、その頃、私の地元であるこの街は、戦乱の只中にあったという。
かといって、世界や国を巻き込んだ戦があったワケではない。
どのような状況かといえば……
ストリートレーサー、所謂“走り屋”と呼ばれる人種と、彼らの存在自体を否定し、走り屋を消し去るためならば
“死のレース”
すら平気で行う集団
“潰し屋”
との対立抗争。
潰し屋達の一方的圧力によって、毎夜毎晩のように執り行われた死のレース。
高速であろうが、下道であろうが、峠であっても、変わらないのは
“生き残った者が勝者”
という唯一のルール。
速いか遅いか…… など、勝敗には何も関係無い。
生きて勝つか、死んで負けるかの二つに一つ。
このルールにおいて、潰し屋達の圧倒的優勢は明らかで、走り屋達の敗色は日に日に濃くなってゆく。
ある者はストリートに散って行き、またある者は恐れをなして逃げ失せて行った。
戦争末期に差し掛かると、この街で生き残った走り屋は僅かに数名程度となり、誰もが走り屋の全滅を予感した。
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