CHAPTER 2  氷雨の街

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 夏月も黙って、 彼の後に従った。  二人を乗せた可愛い黄色のミニクーパーは、 ようやく活動し始めた銀座の街を抜け、 とことこと渋谷へ向かう。  その車内でも、 夏月は押し黙ってうつむいたまま、 ほとんど身動きもしなかった。 ギイも何も言わず、 夏月の方を見ようともしない。 重苦しい沈黙が、 夏月の胸を締め上げた。  やがてミニクーパーは、 渋谷センター街近くの雑居ビルの前に停車した。 ダンスクラブ『HUSH』が入っているビルだ。  自動車を停め、 エンジンを切っても、 ギイは降りろとも何とも言わなかった。 両手をステアリングにかけたまま、 ただじっと前を見つめている。
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