CHAPTER 2  氷雨の街

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 ギイを起こさないように、 静かにベッドを降りる。  時計を見ると、 そろそろ朝の通勤ラッシュが始まる時間だ。 けれど雨のせいもあり、 リビングもキッチンもまだ少し薄暗かった。  どうしよう。 泊めてもらっって、 髪まで綺麗にカットしてもらったお礼に、 朝ご飯でも作ってあげようか。 そうは思うものの、 他人の台所では、 どこに何があるのかもわからない。 とりあえず、 ケトルでお湯だけ沸かしてみる。  ケトルが沸騰を知らせてピーピー鳴り出した頃、 ギイももそもそと起きてきた。 「あら、 早いねえ……」  髪は寝乱れてくしゃくしゃで、 うっすらとヒゲも浮いている。 こうして見ると、 彼もやはり普通の男だ。
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