CHAPTER 2  氷雨の街

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「どれ。 ちょっと顔見せてごらん」  ギイは夏月の細い顎に指をかけ、 すっと上向かせた。 「あー、 やっぱりまだ少し腫れてるわねえ。 昨夜のうちに少し冷やしておけば良かったかしらね」  胸の奥で、 どきんと心臓が飛び跳ねた。  ギイに触れられた部分から、 じゅん、 と熱い何かが広がる。 やがて彼の指が離れても、 その感触はひどく火照るものとなって、 夏月の肌の上に残っていた。 「おなか空いた?」 「ん……。 うん、 ちょっと」 「じゃ、 ちょっと待ってて。 なんか作るわ」  ギイはキッチンに立つと、 慣れた手つきで朝食の準備を始めた。
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