CHAPTER 2  氷雨の街

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いろいろと試してみて、 結局夏月が選んだのは、 Vネックのセーターだった。 かぽっとかぶってウエストにベルトを巻けば、 ワンピースのように見えないこともない。  メイクもせず、 短くなった髪にはブラシをかけるだけ。 けれどそれだけで、 ごてごて塗りたくっていた時よりも、 自分の顔がずっと好きになれるような気がした。  やがてキッチンからいい匂いが漂ってくる。 トーストとコーヒー、 かりかりのベーコンにカップスープ。 「はい、 お待たせ」  二人、 向かい合ってテーブルにつく。  こうやって一緒に食事をしていると、 まるでずっと昔から二人でこんな朝を迎えていたような気がする。 本当はこんなこと、 もう二度とない筈なのに。 ギイと一緒に朝の時間を過ごすことが、 とても自然に思えてくるのだ。
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