CHAPTER 2  氷雨の街

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 濃いめのコーヒーをブラックで味わいながら、 ギイは夏月を見つめる。 「他に帰りたいとこは、 ないの? あるんなら言ってごらん。 送ってってあげるから」 「帰りたい、 とこ……って……」  その視線に、 胸がつまる。 「好きでやってるわけじゃないんでしょ? あんなこと。 そーゆー顔してるじゃない、 あんた」  他の少女達と同じくうつろなふりをしていながら、 夏月の眼の奥には何かが揺らめいている。 何かを叫びたくて、 必死に言葉を探している。 ――誰も気づいてくれなかった夏月に、 彼は気づいてくれた。 たった一晩、 ともに過ごしただけなのに。
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