47人が本棚に入れています
本棚に追加
兎に角。背後に広がるぱっくりと開いた口に俺は意識を持っていかれていた。
むしろ、そここそがスタートラインだとでも言われているような感覚に任せ。
自らの足を、なにも知らぬ洞窟へと向ける。
――そこで気付いたのは自分自身について。
そう、感覚。体感共に生前と変わらないその辺りの反応に俺は自分が生前と変わらない状態だということを認知した。
何よりも頭部の感じる風当たりが以前と変わらない。
身体検査をしつつ、足は勝手に洞窟へ向かってるんじゃないかという程進んでいく。
生前と変わらない服装と変わらないジッポと煙草。
そいつに火を灯し、暗闇広がる空間に霊力を宛ながら進んでみる事にした。
罠を事前に察知出来れば洞窟探検など、子供の散策よろしく足取りは軽い。
いや、軽すぎる程に。この何処ともわからぬ星は、良く俺に馴染んでいた。
紫煙と赤点、そして俺の足音が静寂に溶け込むような。呑み込まれているような錯覚に呑まれないよう、細心の注意だけは丸腰ながらに払った。
最初のコメントを投稿しよう!