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眠気と戦いながら何とか午前中の授業を終え、弁当と作詞ノートの入ったカバンを手に部室の鍵を借りに職員室に向かう。
いちいち鍵を掛けるのも面倒だが、部室には大事な楽器が置いてある。
良からぬヤツらに悪戯されて壊されたら困るので、いつも戸締りはしっかりやっているのだ。
「失礼しまーす」
ノックをして職員室のドアを開けると、担任のマツキヨが「辻元、来たか」と真っ先に声を掛けて来た。
毎日のように昼休みにも鍵を借りに来ているから、マツキヨも何の用かすぐに解ったんだろう。
「おぅ、マツキヨ。久しぶりやな」
「さっき教室で会っただろうが。それとマツキヨじゃない、松本先生だ」
「マツキヨ先生、織部先生は?」
職員室の中を確認もしないでマツキヨに尋ねると、マツキヨが「出払ってるよ」とすぐに教えてくれる。
生物教科担当で寮の管理人をしている織部先生は、軽音部の顧問をしている。
名前だけで部室に顔を出した事はほとんど無いが、卒業した軽音部の先輩からは口煩いくらいに『織部先生を怒らせるな』と言われている。
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