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「え、あ、あの……これは?」
「挨拶よ、挨拶。まあ元からキス魔なんだけどねー、私って。可愛い女の子なんて特にねー」
唇を離した沙羽子に頬を赤らめながら質問する銀。当の沙羽子は実にあっけらかんとした表情で自身の唇に人差し指を当てながら笑っていた。
(お、おぉぅ……キス魔万歳!!なんだけど……はい、俺実は男ですなんて言えなくなったよね?確実に男に戻ったら殺されかねないよな!?)
初段の変身とは、俗に言う女体化と言われるものである。
つまり、内藤 銀とは元々男であり、免許証等を見ようものなら当然男としての彼の写真が張られているだろう。
「どうかした?」
「な、何もっ!!さて……カードは南を指し示してる気がしますね。さあ、冒険に出掛けましょう!?」
(いや、逆に考えろ。この状況は寧ろ好機……二度と訪れないかもしれないじゃないか?
女体化の秘密がバレるリスクなど……恐れるな、リスクとチャンスは紙一重だ、こんな殺伐とした世界の中で……この人が、俺の最後の希望だ!!)
カードが僅かに動く方向を察知した銀は必死に作り笑いを作りながら愛機に股がる。
彼の脳細胞は既にトップギアなのかもしれない。
「………そうね、さっさとスイレンちゃんに会わないとねっ」
沙羽子は銀の急ぐ様を余裕が無いのに無理して明るく振る舞っているようにでも受け取ったのだろうか?いや、実際そうなのだが、兎も角彼女もそんな相手の様子に少なからず元気を貰い愛機に股がる。
二人は南へとその進路を定め走り始めた。
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