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女……スイレンは先程まで祈りの場としていたビルを降りて再び廃墟となった街を歩いていた。
人は誰もいない、大半が殺されたか、避難したかで表だって出歩く事はない……だから、もし気配や足跡を察知出来たなら、それは
「!……屑ヤミー、ですか」
ハッとして振り返ったスイレン、彼女の予想通り、背後から自分の元へとたどたどしい足取りで歩いて来たのは人間等ではなかった。
屑ヤミー、ある世界の欲望の化身が造りだした化け物、のなりそこない。とでも言ったとこだろうか。
明らかに自分を狙って歩いて来る屑ヤミー達、その数は10体。彼女は一番自分に近い屑ヤミーを視界に捉えると力強く睨み付ける。
次の瞬間、その屑ヤミーは突如何かに弾かれたように後ろの仲間を巻き込んで後方に吹き飛んだ。
「やはり、消滅までは……」
短く呟いたスイレンは彼らに背を向け駆け出す。屑ヤミー達が再び自分を追って来ているのは気配から分かった。
暫く走り続けたが、元より体力がないのか、彼女はやがて二方向から挟み撃ちされるように追い詰められてしまった
「こんな、所で……!!」
再び彼女が力強く屑ヤミーを睨むと、先程のように衝撃を受けて若干後退したが、その間に反対側の屑ヤミーが近づいていた。
反対側に同じことをすれば、先程飛ばした側の屑ヤミーが体勢を立て直し接近してくる……これでは
「は……は……っう……う」
そして彼女は突然の頭痛に頭を押さえて顔をしかめる。
これまで、屑ヤミーを吹き飛ばして来たのは、数多の世界で超能力、その中でもサイコキネシスと呼ばれる力だったが、それは連発すればするほど彼女の脳に負担をもたらしていた
苦しそうに息を吐き出しながら尚もサイコキネシスを放とうとしたが、彼女の脳が拒否反応を起こした結果か、彼女は膝から力が抜けその場に座り込んでしまう
「っ……そんな……!!」
彼女を囲むようにどんどん迫って来る屑ヤミー、最早彼女は捕まるのを待つばかりの羽を奪われた蝶と同じだった。
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