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綺麗な薔薇には棘がある。
単に綺麗だからと不用意に近づくと、思わぬ痛い目に遭うという意。
よく綺麗な女性に使う言葉だ。
容姿端麗、頭脳明晰。だが、毒舌やら腹黒やらドSやら。
女はおしとやかにとか、女の子らしくとか。
一般常識的に『女』という概念には、一昔前のものが残っている。
そんな女ばかりだったら、綺麗な薔薇には『棘』があるという言い回しは生まれなかったかもしれない。
綺麗な本物の薔薇限定の言い回しだったかもしれない。
「それだったら世の中のおなごは全員同じになっちまうよ。そりゃつまらんね」と1人の男――高杉が愉快に笑いながら言う。
「つまるつまらんの話じゃねぇんだよ。どうにかしてくれ」と、助けを求めるように別の男――木崎が箱から煙草を1本取り出す。
「たばこはいかんよ。寿命縮むぞ」
「知るか。勝手に縮め」
「そりゃねぇだろうよ。てめぇの寿命だぞ?」
「へいへい」
ふー、と天井を見て煙を吐く。
その煙が空気と同化していくのを見ながら、「こりゃ俺の寿命も縮んじまうね」と高杉は愉快そうに言う。
「んで?あのガキ2人はどこいったよ」
「どっかいっちまったよ。」
「見回りか。偉いな」
「見回りぃ?」
ふー、と眉間に皺を寄せながら、鬱憤晴らし気味に煙を吐く。
「見回りして来いつったら、反撃してきやがったよ、2人して」
「あの爆音はそれが原因かぁ!」
がっはっは!と高杉は愉快に笑い飛ばす。
「がっはっはって……」と呆れながら呟き、木崎はとある場所を見た。
現場は木崎の視線の先を通り越した壁の向こうの話。
高杉曰く『あのガキ共2人』は、仕事しろと命令を下す上司に反抗して、バズーカをぶっ放して逃走。
おかげで窓ガラスが割れた。
(バズーカ室内でぶちかますって、どんな神経してんだあの馬鹿共は)
なんて思うが、それに慣れてしまった自分が1番馬鹿かもしれない。
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