【01】それを女と呼ぶべきか。

5/26
前へ
/184ページ
次へ
サボりに適切な場所を探す2人組。 童顔の女は綾辻凪。童顔の男は宗像統護。 2人とも童顔なので、はたから見れば社会人には見えないだろう。 仲の良い男女2人が街中を歩いている、としか見えないだろう。 ―――――――制服を着ていなければ。 腐っても警察官。ということで、職業柄制服の着用は義務付けられている。 「いやぁ、警察が暇ってことァ、この町は平和ってことだな」 ぶらぶらと街中を流浪する2人の視界の片隅で、1人の少女が柄の悪い男たちに絡まれている。 が、綾辻は飄々とそんなことを抜かす。 「いくらなんでも見てみぬふりは首が飛ぶってもんだぜ。」 「忠告すんならテメェが行け」 「俺ァ人見知り激しいんで。人前に出ることはなるべく避ける主義なんで」 「ふざけんな。初対面でいきなり暴言吐いたことしっかり覚えてんぞ。」 綾辻は懐かしき最悪の出会いを思い出しながら、同僚の胸ぐらを掴む。 「よく見りゃ絡まれてる女、結構な上玉みてぇだ。」 「うっしゃ。行ってきやす!!!!」 胸ぐらを掴んでいた手を離し、ビシッ!と敬礼を決めて、綾辻は現場へと走っていく。 「ケッ、」 宗像は走っていく同僚の後姿を鼻で笑う。 (単純馬鹿ってのは扱いやすいことこの上ねェ) この隙に、宗像は己のサボりスポットへと足を向ける。 元から行く当てであった最高のサボりスポット。いい場所故に、あの女には教えてやりたくなかった。 あの女が隣からいなくなった今、行かないでどうする。 ということで、宗像は一瞬たりとも迷わず、踵を返してきた道を戻っていく。 ・ ドカン!とナンパ男1人が壁に埋まる。どうやら蹴飛ばされたらしい。 「へい、ねーちゃん。こんないけすかねぇ男じゃなくてあたしとイイコトしようぜ。」 絡まれていた被害者も、絡んでいた加害者も。全員目を似たように丸くして、乱入者を穴が開くほど凝視。 格好を見ている限り、警察らしい。 (え。今の発言、警察の発言!?) と思うのも無理はない。 若干1名ほど、壁に埋まるほどの力で蹴り飛ばされているが、それも警察の仕業である。 「……あんた、ほんとにけーさつか?」 ナンパ集団の1人が、恐る恐る綾辻に尋ねる。 待ってましたと言わんばかりにニヤリと笑い、警察手帳を相手に見せびらかす。 「目の穴かっぽじってよく見やがれ!!」
/184ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加