ハルという男

19/19
66人が本棚に入れています
本棚に追加
/227ページ
なんて正直な男だろう。ハルの鼓動がまた加速した。 でも私を押し倒すことも、キスすることもない。 「いいよホントに。そーいうのナシ」 そして身体を離し、顔を手で隠してしまった。 いま絶対に赤面してる! 私が顔を覗こうとしたら、さらに身をひねって逃げる。きっと照れてる顔、見せまいとしてるんだ。 「誘惑するのも………ナシね?」 うーー、やっぱりハル可愛いよ! 最初、草系とか思ってごめんよ。 よく考えたら、あんなガラの悪い酔っぱらい2人に、ひとりで立ち向かってくれたんだよね……。 「ありがと。ゴメンね」 え?っと、ハルが怪訝な顔したから上を向いて誤魔化した。と、そこに白い天井があった。 いまこの時、日本中にある同じような天井の下で、どれだけの数の人間が、こうして他愛なく笑っているんだろう……… つい昨日まで、私には想像もつかない世界だった。
/227ページ

最初のコメントを投稿しよう!